水球は水中のハンドボールと呼ばれています。 選手達は足を床に着けられないので、泳ぐか立ち泳ぎをしながら、ボールをパスしたりシュートしたりしてゴールを目指します。 ですので、とっても体力を使う、過酷なスポーツなんです!

左から
水泳部主将 藤原圭介
水球主務 川上翔
(敬称略)
水球について、水球主務の川上さん、水泳部主将の藤原さんにお話を伺っていきます。
― 水球はハンドボールと似ているそうですが、どこが違うんですか?
川上
ハンドボールと大きく違う点は、攻撃に時間制限があること、それに両手でボールを使ってはいけないことです。水球は30秒で攻めないといけないんです。
― 30秒で攻めないといけないんですか?水中では動きが鈍るので、時間の余裕はないですよね。
川上
そうですね、時間がないのでとても難しい競技です。しっかり動くことは当然なんですが、もっと重要なのはプレーしながら状況判断をすることです。ボールを持ちながら、泳ぎながら、「どこにパスしないといけないか?誰がシュートしないといけないか?」を考えているんです。
― 川上さんはどこのポジションなんですか?
川上
フローターバックというポジションです。サッカーで言うセンターバックのことです。ゴール前に陣取って得点を狙ってくるフローターを押さえたり、後ろからパスをまわしたり、全体に指示を出したりします。
― 司令塔ですね。何に気をつけてプレーしていますか?
川上
仲間の動きをよむことです。「こいつやったらどう動くのか」がわかってないとパスが的確に出せないので。

― なるほど。戦略家ですね。水球のルールに話を戻しましょう。水球は水中の格闘技だと呼ばれているそうですが、なぜそう呼ばれているのでしょう?
藤原
水中でダーティーなことをしてるんです(笑)水面下で掴む、殴る、蹴るは当たり前です。これらはもちろん反則なんですが、水面下は審判には見えないので多くは反則を取られないんです。 極端に言えば、審判が見てないところであれば何をしてもいいんです。うまい選手であれば、審判が見てへんところで海パンをひっぱったり、沈めて息をできんようにしたり、いろんな反則技をしてきます。
― 二人の審判が上から見てるそうですが、わからないんでしょうか?
川上
審判は水球経験者なんで、水面下でどういうことが行われてるかだいたいわかっているんです。でも、試合には流れがありますから、ファウルがプレーに絡まなかったら、ファウルを取らないことも多いんです。もちろん、ひどい場合はファウルを取ります。
― どんな怪我の方がいるんですか?
川上
蹴られて骨折したりだとか、網膜はく離になったりだとか。僕も相手のひじがあったって目の下を切ったことがあります。パカッと割れちゃって、血がバーバーって出ちゃいました。そのときは五針縫いました。この前は前歯折れましたし。わざとではないんですが、お互い試合中は必死なんで怪我は多いです。
― 藤原さんはどんな怪我をしたんですか?
藤原
僕はあばら(脇腹)の骨を折りました。腰を上げていなかったのが悪かったんです。当たり所が悪かっただけで、普通によくあることです。
川上
腰を上げて敵にあたりに行くのがセオリーなんです。腰を水面上に上げていないと、蹴られたときに見えないんです。お腹に当てられちゃうから。「そこにお腹があるから悪いんだよ」って言われちゃうんです。巻き足をして、浮かした高い状態をキープしてないとダメなんです。巻き足とは、両足を交互に動かして、足の裏で水を踏むようにすることです。
― 浮かした状態ってキープするのって大変じゃないですか?止まっていても巻き足し続けないといけないんですよね?
川上
慣れですよ!慣れでできるようになってるんで(笑)
― 本当ですか?しかし、さすが水中の格闘技ですね。ファウルの連続なんて…。
川上
そういうスポーツなんで。水面下の技をアンダーテクニックって言うんですけど、技術のうちなんです。
藤原
その辺の格闘技より怪我すると思いますよ。グーで殴る時もあります。半分喧嘩です(笑)

― 厳しいスポーツなんですね。練習方法やスケジュールはどうやって決めるんですか?
川上
まず大きなスパンでどの時期に何をするのかを考えます。目標となる試合があるから、それまでに「いつ基礎練習をやるのか?」、「いつ応用期間に入るか?」を考えながらプランを立てていくんです。そこから基礎練習だったら基礎練習の中で細かく区切って、何をするのかを決めていきます。
― 前期のスケジュールはどうだったんですか?
川上
9月初旬までリーグ戦があったんですけど、前期はそのリーグ戦を目標にしていました。4月の間に基礎力を最初に鍛えていました。足の力だとか、泳ぎ続けるスタミナだとか。それで5月から試合も交えて技術力をつけていきました。
― 足の力ってやっぱり大事なんですか?
川上
そうですね。足の力がないと相手に押されてそのまま沈んでしまうんで。水球は押し合いしてて沈められたら、沈む方が悪いんです。沈むような弱いやつが悪い。そういう厳しいスポーツなんです(笑)
― 足の力をつけるためにどんな練習をするんですか?
川上
まず、40mダッシュで泳ぎます。着いたら重り(10kgや7.5kgなど)を手に持って、30秒巻き足をします。それを6セットします。
― 厳しいですね。スタミナも大変重要な要素ですよね?スタミナをつけるためにはどういう練習をされていますか?
川上
そうですね、長い距離をしっかり泳いで、その他にもダッシュを入れるんです。ダッシュっていうのは水中ダッシュです。10分間の練習で、最初の40秒をスィム、20秒をダッシュっていうのを10セットします。あとは練習中のプレーで体力をつけます。
― どれくらい練習するんですか?
川上
一日の練習時間は5時間です。それを週5、6日は練習します。学校がある時で16時半から21時まで。土日、夏休みが10時から12時まで、14時から17時まで、っていうのがだいたいのスケジュールです。

― そうとう体力的に大変だと思うんですが、ゲーム中に倒れたりもするんですか?
川上
そうですね、ゲーム中に「もう、やばいことなってる…」って言ってるやつもいますね。ゲームが終わってから倒れたりとかもあります。体力的なこともそうですが、暑さのせいもあります。やっぱりプールの中も暑いんで。
― 脱落する人はいないんですか?
川上
まぁ辞めるやつもいてますわ(笑)でも強くなるためやったら、それくらいやらないと勝てませんからね。今いるメンバーは練習嫌いなやつはあんまりいません。みんな積極的に取り組んでるんです。それが全体のモチベーションにつながって、試合にも結果となって表れていると思います。
― みなさん、すごいガッツですね。練習していく中で、最も気をつけていることは何ですか?
川上
やっぱり体のケアをしっかりすることです。常にケアをしていないと怪我をしてしまうんで。負担が体にめちゃめちゃかかるんで。
― 食事に関して気をつけていることはありますか?
川上
とにかく食べまくれっていう感じですね。僕ら夏の間はどんだけご飯を食べていても体重が減っていくんです。練習終わった後におにぎり食べたりして、できるだけ食べないといけません。それから特に夏は、水分補給をしっかりしないと熱中症になってしまいます。
藤原
僕もたまに(「食べまくれ」と)言います。まぁ食品栄養科学科なんで(笑)
― 食事以外で何かケアしていることはありますか?
川上
練習前のストレッチや、練習後のマネージャーのマッサージとか。あとはアップとクールダウンをしっかりすること。 クールダウンっていうのは軽くゆっくりと泳ぐことです。それによって体の乳酸を飛ばします。 クールダウンをしっかりすることによって、その日の疲れを次の日に残さないようにするんです。


― では、これからは川上さん自身のことについて伺っていきます。水球をしてきて、大変だったことって何ですか?
川上
練習時間が長いことです。シーズン中だとほぼ毎日練習なんで。僕は練習終わってから帰ると、夜の11時頃になるんです。
― 11時は遅いですね。川上さんはどこにお住まいなんですか?
川上
大阪の豊中市に住んでいます。21時くらいまで練習して、それから着替えたりしていると、帰る時間はとそれぐらいになるんです。帰ったらもう飯食って寝るだけです。「勉強があんまりできてないなー」って感じるときもありますし、「しんどい…」って感じるときもありますよ。
― やっぱり、しんどいですか??
川上
水球は競泳と違ってチームプレーなんで、練習しないといけないことが多いんです。 基礎練習、応用練習、戦術練習とやることが多いんで、どうしても練習時間が長くなってしまうんですよ。 一回の練習時間が3時間だったらやることが限られてきて「あぁっ、これだけしかできへんかったなー」ってなるし。 それに、強くなろうと思うとどうしても練習時間が長くなって、しんどくなるんです。
― 特に上から指示する立場としてはきついですよね。「おい、どんだけさせんねん!」ってなりませんか?
川上
そうですね!そういうことありますよ。自分で練習メニューを考えてて、自分で「やりたくないなー」って思うことが多々あります(笑)「こんなメニュー絶対やりたくない!」って思いながら、「まぁ自分で書いたし、やらななー」ってやってます。

― やっててよかったことを教えてもらえますか?
川上
試合中の緊張感を味わえることです。この緊張感はクラブ活動をやってないと味わえないと思います。サークルだと、どうしても遊び感覚が入ってしまうと思うんです。全体のモチベーションを保てない。クラブ活動は大きな目標に向かって、みんなでいっぱい練習します。だからこそ試合で味わえる緊張感って格別なんです。
― なるほど。本気でやるからこそ味わえる緊張感なんですね。他に何かありますか?
川上
あとは仲のいい友達ができたことです。自分のこともよく分かってくれてるし、相手のこともよく分かっている。そういう友達ってなかなか出来ないと思うんですよ!そういう友達ができたのはよかったと思います。
― 親友ですね。そういう友達がいるのは本当にうらやましいです。お互いに分かり合っている友達は一生の宝ですよね。
川上
そうですね。クラブ活動をすると、一緒に過ごす時間が多いんで、すごく仲良くなれます。水球メンバー全体の結束力もとても強いです。
― チームをまとめるために気をつけてることはありますか?
川上
みんなが話せる雰囲気づくりを心がけています。全体のモチベーションを高めることにつながっていると思います。
― 具体的にどういう工夫をしてるんですか?
川上
下回生にも話を振ることです。言うだけじゃ下はついてこないんで、下が発言できるようにしないとダメなんです。プールに入ったら学年関係なく話せるようにする。 例えば、練習試合中に下回生が上回生のパスを取れなかったら、「今のどこに欲しかった?」って下回生にききます。普段から確認しとかないと、試合でミスが出るんで。下回生も何がアカンかったかバンバン言ってきますよ。そうすれば話したいことが話せて、全体のモチベーションを高められるんです。
― 雰囲気づくりは大事ですよね。主務として、全体をよく見ていることがわかりました。2007年度、市大水球部はインカレに出場するわけですが、市大水球部の強さの秘訣を教えてください。
川上
市大の特徴はパワープレーもできるんですけど、早く泳ぐことでも勝負できるっていうのが特徴じゃないですかね。
― パワープレーとは?
川上
一回生に、高校生のとき大阪代表だったすごい強いやつがいるんです。パワープレーっていうのは、主に彼を中心にして、強引に攻めることです。彼が一気にバーっと泳ぐことで敵を抜いて、抜けたところで味方にパスを出してシュートしたり。あるいは、彼が自分でそのまま強引にシュートにいったり。彼は個人プレーが強いんで、そういうプレーができるんです。
― なぜ早く泳ぐことができるんですか?
川上
競泳の練習もしっかりしているからです。他大学は競泳と水球が分かれているところが多いんです。でも市大水泳部では水球の選手も、競泳の練習をして競泳の試合に出ているんです。
― なるほど、パワープレーも泳力もあれば、個人プレーでは有利ですね。
川上
ただ、速く泳げても水球が強くなるとは限りません。泳ぐのが遅くてもそれなりの技術を持っていれば、泳ぎが早い選手も抑えられます。水球にはいろんな動きがあって、競泳が強くてもそういう動きができないんで。
― 水球は競泳と違ってどういう技術が大事なんですか?
川上
競泳の泳ぎはまっすぐ前に泳ぐだけじゃないですか。でも水球はまっすぐ前に泳ぐだけじゃなくて臨機応変に泳がないといけないんです。例えば、ボールさばき、足の力、足の使い方なんかは競泳にはない要素ですよね。特にボールさばきは大事です。競泳は自分一人でやるものですけど、水球はチームプレーです。個々がチームの戦略に合わせて臨機応変にボールをさばかないといけないんです。
― 個人技よりチームプレーが大事ですか?
川上
そうですね。個人プレーでごり押しできるようなスタープレーヤーはそんなにいないんで。個人プレーが強いチームの特徴を活かすために、チームプレーを大事にしていきたいです。特にパスなどの細かい連携を確認して、練習をしていきます。
― 練習がんばってください。インタビューに答えてくださり、ありがとうございました。

関西学生水球秋季戦で二位となり、インカレ出場を勝ち取った市大水泳部。ですが残念なことに、インカレでは悔しくも一回戦で敗退してしまいました。
負けたとはいえ、勝つために練習し続けた水泳部を、私は尊敬します。水球メンバーを取材してみて、彼らに火のような熱い闘争心を強く感じました。
敵に蹴られても、反則した相手を批判する前に自分の弱さを認める。勝つためには身体を傷めつけてでも練習し続ける。
水球メンバーは自分を追い込むことで大きな炎になろうとしてきたのでしょう。
挑戦し続けるその姿勢こそ、勝利以上に価値のあるものだと思います。
市大水泳部の水球が、今後も活躍することをお祈りしています。




次回は、
第三回『水泳部を支える幹部たち』
です。お楽しみに!
取材・文:ユータロー
校正・デザイン:奥村
(H19.11.21)